ADL利得とは、ADL維持等加算(Ⅰ)(Ⅱ)を算定できるかを判定するための指標です。6月目のADL値から、評価対象利用開始月のADL値を引きます。そこに、開始月のADL値に応じた値を加えて求めます。加える値は、サービスの種類によって異なります。通所介護と介護老人福祉施設では、ADL値の変化が同じでも結果が変わります。判定には、利用者ごとのADL利得の平均を使います。多い順と少ない順に、それぞれ1割の利用者を除いて平均します。その値が(Ⅰ)は1以上、(Ⅱ)は3以上であることが算定の要件です。

この計算を自分でたどれると、介護ソフトやLIFEが示す結果を確かめられます。算定できそうかを事前に見込むときにも役立ちます。また、2026年5月に、LIFEの運営が国民健康保険中央会(国保中央会)に移りました。2026年度にこの加算を算定するには、ADL値の登録が要ります。評価対象期間のADL値を、国保中央会運用LIFEに登録するのが原則です。この記事では、計算式、サービス別の加える値、平均から除く利用者の数え方を扱います。10人の計算例と、2026年度のLIFEでの扱いも整理します(2026年10月時点)。

ADL利得の計算式

ADL利得は、利用者ごとに次の式で求めます。

ADL利得 = 6月目のADL値 − 評価対象利用開始月のADL値 + 開始月のADL値に応じた値

ADL値は、Barthel Indexで評価した合計点(0〜100点)です。評価は、一定の研修を受けた者が行います。評価の項目と配点は「Barthel Indexの10項目と配点」で解説しています。

6月目は、評価対象利用開始月の翌月から数えて6月目の月です。例えば、開始月が4月なら10月です。6月目にサービスの利用がない場合は、利用があった最終の月のADL値を使います。なお、2024年度改定の概要資料は、この値を「調整済ADL利得」と呼んでいます。

(参考:留意事項通知の新旧対照表(2024年度改定)、「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」第2の2、厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」)

サービスによって違う「加える値」

開始月のADL値に応じて加える値は、サービスごとの留意事項通知に定められています。通所系と施設系では値が異なります。

開始月のADL値

通所系の加える値

特定施設・地域密着型特養の加える値

介護老人福祉施設の加える値

0以上25以下

1

2

3

30以上50以下

1

2

3

55以上75以下

2

3

4

80以上100以下

3

4

5

「通所系」は、通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護です。「特定施設・地域密着型特養」は、次の3つを指します。特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護です。Barthel Indexの合計点は5点刻みなので、表の区分に抜けはありません。同じ特別養護老人ホームでも、値は違います。地域密着型は、介護老人福祉施設(広域型)より1ずつ小さい値です。

ADL値が変わらなかった利用者のADL利得は、加える値と同じになります。ADL値が下がった利用者は、マイナスになることもあります。例えば、介護老人福祉施設で開始月40・6月目35の利用者は、35−40+3=−2です。

2024年度改定の前は、初回の要介護認定から12月以内の利用者に別の値を加えていました。改定で計算方法が簡素化され、現行の通知にはこの区別がありません。通所介護向けの解説や、改定前に作った計算表を使っていないか確かめてください。

(参考:留意事項通知の新旧対照表(2024年度改定)老企第36号・老企第40号・老計発第0331005号等、厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」)

平均から除く利用者の数え方

評価対象者は、評価対象利用期間が6月を超える利用者です。評価対象者のADL利得を多い順に並べ、上位1割と下位1割に当たる利用者を除きます。残りの利用者(評価対象利用者)で平均を出します。除く人数は上位・下位それぞれで計算し、1未満の端数は切り捨てます。

評価対象者の数

除く人数

平均に使う人数

10〜19人

上位・下位1人ずつ

8〜17人

20〜29人

上位・下位2人ずつ

16〜25人

30〜39人

上位・下位3人ずつ

24〜33人

加算の要件である「評価対象者10人以上」は、除く前の人数で数えます。除いたあとの平均が1以上なら(Ⅰ)、3以上なら(Ⅱ)の要件を満たします。

次の表は、通所介護で評価対象者が10人の場合の計算例です。ADL値は、説明のために置いた仮の値です。

利用者

開始月のADL値

6月目のADL値

加える値

ADL利得

A

85

85

3

3

B

60

70

2

12

C

45

45

1

1

D

70

70

2

2

E

30

35

1

6

F

90

85

3

−2

G

55

55

2

2

H

20

20

1

1

I

65

55

2

−8

J

80

80

3

3

10人の1割は1人です。ADL利得が最も多いB(12)と、最も少ないI(−8)を除きます。残りの8人の合計は16で、平均は16÷8=2です。1以上なので、(Ⅰ)の要件を満たします。3以上ではないので、(Ⅱ)の要件は満たしません。

LIFEや介護ソフトの結果を確かめるときは、平均の値より先に人数を見ます。除く前の人数と除いた人数が合っているかを見ると、登録漏れに気づきやすくなります。加算の要件全体と届出の時期は「ADL維持等加算の算定要件」で解説しています。

(参考:留意事項通知の新旧対照表(2024年度改定)、厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」)

2026年度の算定に必要なLIFEへのADL値の登録

LIFEは、2026年5月11日から国保中央会が運用しています。移る前のLIFEは、厚生労働省が運用していました(厚労省運用LIFE)。そこへ提出済みの様式情報は、原則として出し直す必要がありません。ただし、ADL維持等加算は、評価対象期間中のADL値がそろわないとADL利得を計算できません。そのため、2026年度に算定する場合の扱いが、別に示されています。厚生労働省の2026年4月21日の事務連絡(介護保険最新情報Vol.1495)です。

原則は、CSV連携です。介護ソフトからCSVファイルを出力して、国保中央会運用LIFEに取り込みます。評価対象期間中に評価したすべてのADL値を登録し、そこから計算したADL利得で算定します。CSV連携ができない場合は、次のように扱いが分かれます。

  • 移行作業日の前月に(Ⅰ)か(Ⅱ)を算定していた場合:ADL利得にかかわらず、前月と同じ区分を続けて算定できます。期間は、移行作業月から2027年3月までに限られます。
  • 2025年度の算定実績がない場合:評価対象期間のADL値をすべて登録すると、ADL利得を計算できます。その値で算定します。移行作業日の前月の時点で、厚労省運用LIFEでの評価対象期間が7か月以上ある場合の扱いもあります。移行前に厚労省運用LIFEで計算したADL利得に応じて、2027年3月までに限り算定できます。
  • (Ⅰ)から(Ⅱ)に上がる見込みの場合:すべてのADL値を、CSV連携か直接入力で登録します。(Ⅱ)の要件を満たせば、(Ⅱ)を算定できます。CSV連携ができず、厚労省運用LIFEでの評価対象期間が7か月以上あるときの扱いもあります。厚労省運用LIFEで計算したADL利得に応じて、2027年3月までに限り(Ⅱ)を算定できます。

どの場合も、移行作業のあとに評価したADL値は、国保中央会運用LIFEに登録する必要があります。2027年4月以降の扱いは、この事務連絡には示されていません。ADL値の登録は続けてください。厚労省運用LIFEで計算したADL利得を使う場合は、その結果の記録を残しておきます。指定権者への説明に使えます。厚労省運用LIFEは、2026年9月1日を停止日として案内されていました。停止後は、あとから確かめ直せません。

移行作業の期限は、2026年7月31日でした。期限までに移行しなかった事業所・施設は、LIFE関連加算の要件を満たさないとされています。7月サービス提供分以降が対象です。自事業所がどの扱いに当たるかは、算定状況と移行作業日によって変わります。判断に迷うときは、指定権者(都道府県・市町村)に確認してください。国保中央会運用LIFEへ移ったあとの扱いは「LIFEへの提出が必要な加算の一覧」で解説しています。CSVの取り込みなど提出の操作は「LIFEのデータ提出方法」を参照してください。

(参考:介護保険最新情報Vol.1495 別添Q&A 問4・問6〜問9、「公益社団法人国民健康保険中央会運用LIFEへの移行に係る再周知について」令和8年7月2日事務連絡)

ADL利得を確かめる手順

  1. 自事業所のサービスに合う「加える値」を確かめる。よくある失敗は、通所介護向けの解説や、2024年度改定前の計算表をそのまま使うことです。
  2. 評価対象者ごとに、評価対象利用開始月と6月目の月、それぞれのADL値を一覧にする。よくある失敗は、6月目を開始月から数えて、1か月早い月の値を使うことです。
  3. 評価対象期間のADL値が、国保中央会運用LIFEにすべて登録されているかを確かめる。よくある失敗は、移行前のADL値を登録しないことです。提出済みの情報は出し直し不要という原則を、ADL維持等加算にも当てはめてしまいます。
  4. 利用者ごとのADL利得を計算し、上位・下位1割を除いて平均を出す。よくある失敗は、除く人数を四捨五入することや、全員の平均で判断することです。
  5. LIFEが示す結果と自分の計算を比べる。食い違ったときは、登録したADL値と評価月を見直してから請求します。よくある失敗は、LIFEの結果だけを見て、登録から漏れた利用者に気づかないことです。

利用者ごとのADL利得を並べると、ADLが下がった利用者が分かります。算定の判定だけでなく、その利用者の計画やケアを見直すきっかけにも使います。そうすると、利用者の生活動作を保つという加算の目的に沿った運用になります。

まとめ

ADL利得は、6月目と評価対象利用開始月のADL値の差に、加える値を足したものです。加える値は、サービスの種類と開始月のADL値で決まります。上位・下位1割を除いた平均で、(Ⅰ)(Ⅱ)を判定します。確認の出発点は、自事業所のサービスの「加える値」を確かめることです。評価対象者ごとに、開始月と6月目のADL値も一覧にします。次に、評価対象期間のADL値が国保中央会運用LIFEにすべて登録されているかを確かめます。CSV連携ができない場合は、どの扱いに当たるかを指定権者に確認してください。

参考