シフト作成ソフトを選ぶときの軸は、無料か有料かではありません。夜勤と明け、資格者の配置、時間帯ごとの必要人数など、自施設の条件をどこまで設定できるかです。自動作成した案を手で直す回数を、どこまで減らせるかも見ます。条件を再現できないソフトでは、作成後の手直しが残ります。担当者の負担は、思ったほど減りません。

この記事では、勤務案の自動作成を中心に扱います。ツールの種類と向く場面、勤務表に求められる内容、自動作成で確かめる6つの条件を整理します。施設側で決めておく労務ルールと、無料体験での試し方も扱います。希望の回収から変更・共有までの運用は「介護施設向けシフト管理システムの選び方」で解説しています。

なお、ソフトが作るのは、あくまで勤務の案です。利用者の状態、職員の経験、チームの組み合わせなど、数値だけでは決めにくい事情があります。これらは、確定前に管理者が確かめます。

ツールの種類と向く場面

シフトを作る道具には、表計算のテンプレートから人事・労務まで扱う製品まで、幅があります。まず、現在の困りごとを「希望の回収」「勤務案の作成」「条件の確認」「共有」「実績との連携」に分けます。どこまでを解決したいかを先に決めると、候補を絞りやすくなります。

ツールの種類

向く場面

導入前に確かめたいこと

表計算テンプレート

少人数で勤務区分が少ない

数式と共有設定を管理できる人がいるか

シフト作成専用ソフト

希望の回収と自動作成を中心に負担を減らしたい

勤怠や給与のシステムへ出力できるか

勤怠一体型

打刻・実績・給与計算まで同じ職員情報でつなぎたい

シフト作成の条件設定が十分か

人事・労務一体型

複数拠点で雇用契約や人員情報もまとめたい

必要のない入力項目が増えないか

無料の表計算は始めやすい一方で、権限管理や変更履歴、サポートが弱いことがあります。有料の製品でも、必要のない機能が多ければ、入力の手間が増えます。

運営基準が求める勤務表とソフトの出力

介護保険の施設・事業所は、運営基準で、従業者の勤務の体制を定めておくことが求められています。たとえば、特養(指定介護老人福祉施設)の解釈通知は、原則として月ごとに勤務表を作ることとしています。勤務表では、次の内容を明確にします。従業者の日々の勤務時間、常勤・非常勤の別、介護職員と看護職員などの配置、管理者との兼務関係です。ユニット型の特養では、昼間は、ユニットごとに常時1人以上の介護職員または看護職員を配置します。夜間と深夜は、2ユニットごとに1人以上です。継続性を重視した勤務体制にすることも求められます。

指定申請などでは、厚生労働省の標準様式1「従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表」を提出します。記入するのは、職種、勤務形態(常勤・非常勤、専従・兼務)、資格、1か月分の日ごとの勤務時間などです。シフト記号表(勤務時間帯)も添えます。様式では、4週か暦月か、予定か実績かも選びます。ソフトで確定した勤務表から、これらの項目をそのまま転記できるかを、導入前に確かめます。様式に合う形で出力できるかも確かめておくと、申請や運営指導の準備で作り直す手間を減らせます。

(参考:厚生労働省「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第39号)第24条第1項・第47条第2項、厚生労働省「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準について」(平成12年3月17日老企第43号)第四の23(1)、厚生労働省「(標準様式1)従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表」)

自動作成で確かめる6つの条件

介護・看護の勤務表では、次の6つの条件が重なります。無料体験では、それぞれを自施設の実データで設定できるかを確かめます。

条件

確かめること

夜勤と明け

夜勤後の明け・休みの並びと夜勤回数の上限

資格と役割

看護職員・介護福祉士・リーダーの時間帯別配置

必要人数

フロア・ユニット・時間帯別の不足の表示

個別条件

固定休・短時間勤務・研修・兼務の登録

公平性

夜勤・休日勤務・希望休の偏りの一覧

変更対応

欠勤時の候補表示・交代申請・承認・再通知

必要人数の設定は、人員基準や加算の要件を満たしているかの確認にもつながります。夜勤の人数から夜勤職員配置加算の要件を確かめる方法は「夜勤職員配置加算」で解説しています。ただし、ソフトの不足表示は、登録した人数の条件と比べているだけです。基準や加算を満たしているかの最終的な判断は、勤務実績をもとに施設側で行います。

施設側で決めておく労務ルール

ソフトの警告表示があっても、自施設の就業規則や雇用契約に合っているとは限りません。ソフトに登録する前に、次の点を就業規則と照らし合わせて整理します。休日は、毎週1回以上、または4週間を通じて4日以上与える必要があります。4週4日とする場合は、4週間の起算日を就業規則などで明らかにしておきます。休憩は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上です。年次有給休暇が年10日以上付与される職員には、そのうち5日を取得させる必要があります。基準日から1年以内に、時季を定めて取得させます。ソフトの設定では、起算日、勤務区分ごとの休憩時間、年休の取得状況を確認できるかを見ておきます。

1か月単位の変形労働時間制で月ごとにシフトを作る場合は、就業規則に定めておくことがあります。勤務時間のパターンとその組み合わせの考え方、シフト表の作成手続と周知方法です。ソフトに登録する勤務区分は、就業規則で定めたパターンと一致させてください。変形労働時間制と夜勤の勤怠管理は「介護の勤怠管理」で解説しています。

パートタイム職員など、シフト表で初めて勤務日と勤務時間が決まる職員もいます。厚生労働省の留意事項は、通知の期限や変更の手続を、職員と事前に話し合って決めるよう挙げています。ソフトの希望提出・承認・通知の機能は、このルールに合わせて設定します。留意事項の内容は、冒頭のシフト管理システムの記事で扱っています。解釈に迷う点は、導入前に社会保険労務士などに確認してください。ルールそのものの整理の仕方は「介護施設のシフト管理のルール」で解説しています。

(参考:労働基準法第32条の2・第34条第1項・第35条・第39条第7項、労働基準法施行規則第12条の2第2項、厚生労働省「いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」(令和4年1月7日、改正 令和8年6月19日))

スマートフォンでの希望提出と通知

希望休をスマートフォンから出せると、回収は早くなります。ただし、個人の端末を使わない職員や、操作に慣れていない職員もいます。共有端末、紙での提出、管理者の代理入力などの手段を決めます。提出方法によって、希望の通りやすさに差が出ないようにします。

通知は、多すぎると読まれなくなります。送る場面を、希望提出の開始、締切の前、シフトの確定、重要な変更などに絞ります。こうすると、職員が必要な通知を見落としにくくなります。

無料体験での試し方

無料体験では、機能の有無よりも、自施設の勤務表が完成するまでの時間と手直しの回数を測ります。次の順に進めます。

  1. 実データの準備:職員の氏名などを匿名化し、実際と同じ人数・勤務区分・資格を登録します。少人数の見本データで試すと、条件が重なったときの動きが分かりません。
  2. 対象月の選択:研修や休暇が重なり、条件が多い月を選びます。条件の少ない月を選ぶと、自動作成の精度を高く見積もりがちです。
  3. 初期設定の記録:勤務区分や条件の登録にかかった時間を記録します。販売元に設定を任せきりにすると、導入後に自分で変更できるかが分かりません。
  4. 自動作成と手直しの記録:自動作成した案を手で直した回数と、その理由を残します。直した結果だけを残すと、どの条件が再現できなかったかが分からなくなります。
  5. 職員による確認:希望の提出と確定表の確認を、職員に試してもらいます。スマートフォンに慣れていない職員も含めます。管理者だけで試すと、職員側の操作のつまずきに気づけません。
  6. 出力の確認:勤務形態一覧表への転記、勤怠システムへの受け渡し、印刷の見え方を確かめます。画面上の表示だけで判断しないようにします。

導入後は、初月からすべての例外を設定しないようにします。例外を多く入れると、勤務案が作れないときに原因が分かりにくくなるためです。人員・資格・夜勤などの必須の条件から始め、手直しが繰り返された条件だけを追加していきます。効果は、月ごとの記録で判断します。記録するのは、作成にかかった時間、確定後の変更件数、希望の反映漏れ、職員からの問い合わせ件数です。部署を限った並行運用と費用の比べ方も、冒頭のシフト管理システムの記事で解説しています。

シフト作成の機能を持つ製品の例を、次の表にまとめます。料金や機能は変わることがあるため、無料体験の前に各社の公式サイトで確かめてください。

製品名特徴料金
LINDA
公式サイト ↗
希望休や勤務条件を取り込み、介護施設のシフト作成を支援する。月額LINDA AIシフト:月額8,000円~(1~20名。1職員あたり月額約400円)、初期費用無料。税込・税抜の表記なし(無料トライアルあり)
Shiftmation
公式サイト ↗
勤務希望や必要人数などの条件をもとに、AIがシフト案を自動作成する。個別見積個別見積

まとめ

介護・看護向けのシフト作成ソフトは、6つの条件を自施設の実データで設定できるかで選びます。夜勤と明け、資格と役割、必要人数、個別条件、公平性、変更対応の6つです。出発点は、今の勤務表で手作業で調整している条件を書き出すことです。書き出した条件は、就業規則の勤務区分や休日の起算日と照らし合わせます。そのうえで候補を絞り、無料体験で完成までの時間と手直しの回数を測って比べてください。勤務表が早く確定し、変更の連絡が行き届けば、職員は予定を立てやすくなります。利用者には、必要な資格と人数がそろった体制でケアを届けやすくなります。

参考