業務用インカムは、警備や物流、飲食店など幅広い業種で使われており、製品によって通信方式や呼び出しの仕組み、防水性能が異なります。介護施設で選ぶときは、価格やデザインより先に、自施設の建物と介助の場面で使える仕様かを確かめることが、導入後に「つながらない」「使われない」を防ぐ近道です。職員どうしの連絡が確実に届けば、転倒や急変のときに応援が早く集まり、利用者を待たせる時間も短くなります。

この記事では、確認したい4つの仕様と通信方式の違い、介護現場で加えて見る点、デモ機の試し方を扱います。インカムを導入する目的の整理は「介護施設がインカムを導入する目的」、スマートフォンのアプリで使う方式と専用機の違いは「介護施設のスマホインカム|専用機との違いと費用・通話範囲・操作性の比べ方」で解説しています。

確認したい4つの仕様

仕様

確かめること

見落としやすい点

通信方式

建物のすべての階と居室で通じるか

ステーションの近くだけで試す

同時通話と呼び出し

全員に流すか個別に呼ぶか

関係のない連絡が増えて聞き逃す

防水・防じん

浴室や汚れる場面で使えるか

本体とイヤホンで等級が違う

バッテリー

1勤務を通して使えるか

夜勤の長さで試していない

通信方式は、次の節で見るように方式ごとに通じる範囲の決まり方が違い、鉄筋コンクリートの建物や階の多い建物では、同じ製品でも場所によって通じにくいことがあります。同時通話と呼び出しでは、グループ全員に同時に流すのか、特定の職員やグループだけを呼び出せるのかを確かめます。全員に流す使い方は応援を呼ぶときに向きますが、人数が多いと自分に関係のない連絡が増え、聞き逃しの原因にもなります。フロアやユニットごとにグループを分けられるか、同時に何人まで話せるかを、メーカーの仕様で確かめてください。

防水・防じんの性能は、「IP」に続く2桁の保護等級で示されることが多く、1桁目が固形物(じんあい)、2桁目が水に対する保護の程度を表します(JIS C 0920)。2桁目は、あらゆる方向からの水しぶきに対する「4」、噴流水に対する「5」、水に浸しても影響がないようにした「7」のように、試験の条件ごとに分かれています。数字の代わりに「X」とある項目は、その等級を表示していないという意味で、保護がないという意味ではありません。入浴介助で使うなら、本体だけでなくイヤホンやマイクの等級も確かめてください。

バッテリーは、メーカーが示す使用時間が、どのような使い方を想定した時間かを確かめます。夜勤は日勤より長いことが多いため、1回の充電で夜勤を通せるか、交換用の電池や充電の順番をどうするかも、あわせて決めておきます。スマートフォンのアプリで使う方式では、アプリだけでなく端末の電池の持ちも関わります。

通信方式による違い

業務用インカムの通信方式は、大きく次の3つに分かれます。

方式

通じる範囲の決まり方

導入時の手続き・費用

特定小電力無線

機器どうしの電波が届く範囲

無線局の免許・登録は不要

デジタル簡易無線(登録局)

機器どうしの電波が届く範囲

総務省への登録と電波利用料

IP無線・スマホアプリ

携帯電話の回線やWi-Fiが届く範囲

回線の契約や利用料

特定小電力無線は、比較的狭い範囲での連絡用の制度で、総務省の定める条件を満たした機器であれば、無線局の免許も無線従事者の資格も要りません。デジタル簡易無線の登録局は、使う前に総合通信局へ登録を申請し、開設後は台数に応じた電波利用料を毎年納めます。IP無線やスマホアプリは、機器どうしの距離ではなく回線が届くかで通じる範囲が決まるため、建物の中で携帯電話の電波が弱い場所やWi-Fiの届かない場所がないかを確かめます。

方式によっては、中継器やWi-Fiのアクセスポイントを足して通じる範囲を広げられます。建物の図面を見せてメーカーに相談すると、必要な台数や追加の機器、費用が見えやすくなります。

(参考:総務省 信越総合通信局「免許などを要しない小電力無線局について」、関東総合通信局「デジタル簡易無線局(CR)登録局のページ」)

介護現場で加えて見る点

入浴介助や排泄介助のように、水ぬれや汚れが想定される場面では、防水・防じん性能に加えて、清掃や消毒のしやすさも比べます。IPの防水の等級は真水で試験したものなので、アルコールなどの消毒液で拭いてよいかは、取扱説明書やメーカーで確かめてください。イヤホンを職員どうしで共用するか1人1つにするかも、衛生面と費用の両方から決めておきます。

利用者の居室や食堂で話すことが多いため、声がスピーカーから周りに聞こえないか、イヤホンだけで聞けるかも確かめます。インカムでは利用者の名前や体調を話す場面があるので、周りに聞こえない使い方ができることは、利用者のプライバシーを守ることにもつながります。

生産性向上推進体制加算の算定を考えている施設では、インカム等が加算の対象となる機器の1つになります。加算(Ⅱ)は見守り機器・インカム等・介護記録ソフトウェア等のうち1つ以上、(Ⅰ)は3種類すべてを使う必要があり、どちらでもインカム等は同じ時間帯に勤務する全ての介護職員が使うこととされています。台数を決める前に、勤務する介護職員が最も多い時間帯の人数を確かめてください。要件の全体は「生産性向上推進体制加算の要件」で解説しています。

(参考:厚生労働省「生産性向上推進体制加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例等の提示について」)

デモ機の試し方

デモ機や無料の試用は、カタログの仕様が自施設で実際に使えるかを確かめる機会です。次の順で試すと、導入後の手戻りを減らせます。

  1. 電波が届きにくそうな場所(エレベーターの中、階段、浴室、建物の端の居室など)を図面に書き出し、その場所どうしで通話を試します。ステーションの近くだけで試して判断しないようにします。
  2. 日勤と夜勤のそれぞれで、実際の勤務時間を通して使います。満充電から数時間使っただけで、バッテリーが持つと判断しないようにします。
  3. 入浴介助や排泄介助の場面で、手袋をしたまま、手がぬれたままで操作できるかを試します。事務作業の合間の操作感だけで決めないようにします。
  4. 食事や申し送りの時間など、複数の職員が同時に話す場面で、聞き取りやすさと呼び出しの分け方を確かめます。少人数だけで試して判断しないようにします。
  5. 使った職員から、聞き取りやすさ・装着感・操作で迷った点を聞き、比べた製品ごとに記録します。管理者だけで評価を決めないようにします。

製品ごとの料金形態と特徴は、次の表で比べられます。料金やプランは変わることがあるため、見積もりを取る前に各社の公式サイトで最新の条件を確かめてください。

製品名特徴料金
Buddycom
公式サイト ↗
スマートフォンをインカムのように使い、音声・映像・位置情報を共有できる。月額Talk Liteプラン:年契約で1ユーザー月額600円、月契約で月額1,000円(税抜)。上位プランあり(30日間無料トライアルあり)
アルインコ インカム/アプリ無線
公式サイト ↗
施設内の職員同士がリアルタイムに通話し、連絡や応援要請を素早く共有できる。買い切り特定小電力トランシーバーなどの機器はオープン価格(販売店で購入)。構成により個別見積

まとめ

介護施設の業務用インカムは、通信方式・同時通話と呼び出し・防水防じん・バッテリーの4つの仕様が、自施設の建物と介助の場面に合うかで選びます。出発点は、電波が届きにくそうな場所と、同じ時間帯に勤務する職員の最大人数を書き出すことです。そのうえで候補の製品のデモ機を借り、日勤・夜勤の実際の勤務と入浴介助の場面で試してから、方式と台数を決めてください。

ナースコールや見守りシステムとの連携を考えている場合の確認点は、「介護インカムとナースコール・見守りシステムの連携|選ぶときの確認項目と問い合わせ前の準備」で解説しています。

参考