介護の勤怠管理が難しいのは、夜勤、変形労働時間制、直行直帰が重なるためです。日勤だけの職場と同じ集計をすると、深夜や時間外の時間数がずれます。時間数のずれは、そのまま賃金の計算の誤りになります。
決まりのもとは、労働基準法と労働安全衛生法です。厚生労働省は、介護の事業所に向けたパンフレットも出しています。正しい記録は、職員に賃金を正しく支払うための土台です。休憩や休日が取れているかも、記録から確かめられます。
この記事では、まず事業所に求められる記録を確かめます。次に、勤怠が難しくなる場面と、夜勤1回の計算例を示します。後半は、勤怠管理のアプリやソフトの確認点です。クラウド型への移行、GPS打刻、給与計算との連携を扱います(2026年10月時点)。
勤怠 管理で 事業所に 求められる 記録
勤怠管理の中心は、労働時間を正しく把握して記録することです。厚生労働省は、2017年1月にそのためのガイドラインを定めました。使用者は、労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、記録します。確認の方法は、原則として2つです。1つは、使用者が自分で現認する方法です。もう1つは、客観的な記録をもとにする方法です。タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録が例に挙がっています。自己申告は、これらによれない場合の方法とされています。その場合は、職員への説明や実態の調査などの措置が求められます。
労働安全衛生法も、労働時間の状況の把握を事業者に義務づけています。医師による面接指導を実施するためです。方法は、タイムカードなどの客観的な方法その他の適切な方法です。把握した記録は、3年間保存します。厚生労働省の通達は、管理監督者や短時間労働者も対象としています。
把握した時間は、賃金台帳に職員ごとに記入します。労働日数、労働時間数、時間外・休日・深夜の労働時間数などです。賃金台帳の保存期間は5年間で、当分の間は3年間とされています。ガイドラインは、出勤簿やタイムカードも保存の対象としています。
ここから、勤怠管理の道具に求めることが決まります。1つは、始業・終業の時刻を客観的に残せることです。もう1つは、時間外・休日・深夜の時間数を分けて集計できることです。
(参考:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン、労働安全衛生法第66条の8の3、労働安全衛生規則第52条の7の3、労働基準法第108条・第109条・附則第143条第1項、労働基準法施行規則第54条第1項、平成30年12月28日付け基発1228第16号)
介護の 勤怠 管理が 難しくなる 場面
集計がずれやすい場面を、法令の決まりと並べます。条文の番号は、労働基準法と同法施行規則のものです。
場面 | 法令の決まり | 勤怠の記録で確かめる点 |
|---|---|---|
夜勤で日をまたぐ勤務 | 継続した勤務が2暦日にわたる場合は1つの勤務として扱い、始業時刻の属する日の労働とする(昭和63年1月1日付け基発第1号) | 夜勤を午前0時で2日に分けて集計していないか |
変形労働時間制 | 1か月以内の期間を平均して週40時間以内と定めれば、特定された日に8時間を超えて労働させることができる(第32条の2第1項) | 日ごとの労働時間を勤務表であらかじめ定めているか。実績と突き合わせられるか |
休憩と仮眠 | 労働時間が6時間を超えると45分以上、8時間を超えると1時間以上の休憩を途中に与え、自由に利用させる(第34条第1項・第3項) | 休憩の開始と終了の時刻を残せるか。取れなかった休憩を労働時間に直せるか |
深夜と時間外の割増賃金 | 午後10時から午前5時までの労働は2割5分以上、時間外労働は2割5分以上、時間外労働が深夜に及ぶ時間は5割以上(第37条第1項・第4項、施行規則第20条第1項) | 深夜の時間数を、休憩を除いて集計しているか |
宿直 | 宿直の勤務に労働時間・休憩・休日の規定が適用されないのは、断続的な業務として労働基準監督署長の許可を受けた場合(第41条第3号、施行規則第23条) | 許可書があるか。宿直中に通常の業務をした時間を記録しているか |
夜勤明けの日 | 法定休日は原則として暦日(午前0時から午後12時まで)の休業をいい、夜勤明けの日は法定休日に当たらない(第35条) | 夜勤明けの日を法定休日として数えていないか |
表の6つは、夜勤のある事業所で集計を誤りやすい場面です。自事業所の勤務にどれがあるかを、先に書き出してください。
仮眠は、扱いが分かれます。厚生労働省のリーフレットは、労働時間に当たらない仮眠を示しています。電話などに対応する必要がなく、実際に業務を行うこともない仮眠です。一方、ガイドラインは「手待時間」を労働時間としています。指示があればすぐ業務に就くことを求められ、労働から離れる保障がない時間です。コールへの対応を求められている仮眠は、手待時間に当たると考えられます。その時間は、休憩ではなく労働時間として記録します。
宿直と夜勤は、別のものです。夜勤は通常の労働で、休憩を除く時間のすべてが労働時間です。宿直は、ほとんど労働をする必要のない勤務で、許可が要ります。社会福祉施設の許可の基準では、夜間の業務が限られています。一般の宿直業務のほかは、少数の入所者への軽度で短時間の介助作業だけです。おむつの取替えや検温が例に挙がっています。「短時間」は、1勤務に1回か2回まで、1回が通常10分程度とされています。許可のない「宿直」は、通常の労働時間として集計します。
(参考:労働基準法、労働基準法施行規則、改正労働基準法の施行について、介護労働者の労働条件の確保・改善のポイント、労働時間の考え方:「研修・教育訓練」等の取扱い、岩手労働局「断続的な宿直又は日直勤務に従事する者の労働時間等に関する規定の適用除外許可申請について」)
夜勤 1回の 計算例
午後5時に始業し、翌日の午前10時に終業する夜勤を例にします。休憩は、午前1時から午前3時までの2時間とします。始業から終業までは17時間で、労働時間は15時間です。この勤務は、始業した日の1つの勤務として扱います。割増賃金の対象は、変形労働時間制の定めがあるかで変わります。
時間帯 | 労働時間 | 1か月単位の変形労働時間制でこの日を15時間と定めている場合 | 変形労働時間制の定めがない場合 |
|---|---|---|---|
午後5時から午後10時まで | 5時間 | 割増なし | 割増なし |
午後10時から午前1時まで | 3時間 | 深夜の割増(2割5分以上) | 深夜の割増(2割5分以上) |
午前1時から午前3時まで | 休憩(労働時間に数えない) | 対象外 | 対象外 |
午前3時から午前5時まで | 2時間 | 深夜の割増(2割5分以上) | 時間外と深夜の割増(5割以上) |
午前5時から午前10時まで | 5時間 | 割増なし | 時間外の割増(2割5分以上) |
深夜の労働時間は、どちらの場合も5時間です。午後10時から午前5時までの7時間から、休憩の2時間を除きます。変形労働時間制の定めがない場合は、8時間を超えた7時間が時間外労働です。午前3時以降の労働が、これに当たります。時間外労働には、36協定の締結と届出も必要です。
定めがある場合も、注意が2つあります。1つは、週や対象期間の枠を超えた時間が、別に時間外労働になることです。もう1つは、休憩中に業務をした時間が労働時間になることです。その時間が深夜であれば、深夜の割増の対象にもなります。
自事業所の夜勤の時間帯で、同じ表を作ってみてください。その表を、今の集計の結果と突き合わせます。深夜の時間数が合わないときは、休憩の扱いと日付の区切りを確かめます。
(参考:労働基準法第32条・第32条の2・第34条・第36条・第37条、労働基準法施行規則第20条、労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)
1か 月単位の 変形 労働 時間制の 確認点
1か月単位の変形労働時間制は、労使協定か就業規則などで定めます。労使協定で定めた場合は、所轄の労働基準監督署長に届け出ます。就業規則を作成・変更した場合も、届出が要ります。定める事項は、対象となる職員の範囲、対象期間と起算日、労働日ごとの労働時間です。労使協定には、有効期間も定めます。制度を使っているつもりでも、定めがなければ計算例の右の列の扱いになります。
労働日ごとの労働時間は、勤務表などであらかじめ具体的に定めます。対象期間が始まる前に、すべての労働日について定める必要があります。定めた労働時間を、あとから任意に変えることはできません。勤務表の作り方は「シフト管理のルール」で解説しています。作成を助ける製品の選び方は、別の記事で扱っています。「シフト管理システムの選び方」と「シフト作成ソフトの選び方」です。
対象期間の労働時間には、上限があります。週40時間に対象期間の暦日数を掛け、7で割った時間です。30日の月は171.4時間、31日の月は177.1時間になります。常時10人未満の職員を使用する保健衛生業などの事業場には、週44時間の特例があります。自事業所が当たるかは、所轄の労働基準監督署で確かめてください。
時間外労働になる時間は、次の3つの順に判定します。勤怠管理の道具が、この3つを判定できるかを確かめます。
- 1日について。8時間を超える時間を定めた日はその時間を、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間。
- 1週間について。40時間を超える時間を定めた週はその時間を、それ以外の週は40時間を超えて労働した時間。1日の判定で時間外になった時間は除く。
- 対象期間について。上限の時間を超えて労働した時間。1日と1週間の判定で時間外になった時間は除く。
(参考:労働基準法第32条の2、労働基準法施行規則第12条の2・第12条の2の2・第25条の2、厚生労働省リーフレット「1か月単位の変形労働時間制」、介護労働者の労働条件の確保・改善のポイント)
訪問系の 直行直帰と 勤怠 管理 アプリの GPS 打刻
直行直帰のある勤務では、労働時間の範囲から確かめます。厚生労働省のパンフレットは、移動時間の考え方を示しています。移動時間とは、事業場、集合場所、利用者宅の相互間を移動する時間です。使用者が業務に必要な移動を命じ、自由に利用できない時間は労働時間です。一方、自宅から利用者宅への直行と、利用者宅からの直帰は通勤時間です。訪問の間の空き時間は、自由に利用できる限り労働時間に数えません。待機を命じられ、自由に利用できない時間は労働時間です。業務報告書の作成や引継ぎの時間も、労働時間に含まれます。
このため、訪問系の勤怠は、出勤と退勤の2回の打刻では足りません。勤怠管理アプリを選ぶときは、次の4点を確かめます。
- 1日に何回も、勤務の開始と終了を記録できるか。
- 利用者宅の間の移動時間を、労働時間として集計できるか。
- 電波が届きにくい場所でも打刻でき、あとから同期されるか。
- 打刻を忘れたときの、修正の申請と承認の記録が残るか。
直行直帰でも、自己申告だけに頼ることはできません。労働安全衛生法の通達は、直行直帰のみを理由とした自己申告を認めていません。事業場の外から社内のシステムを使えば、客観的に把握できる場合があるためです。スマートフォンからの打刻は、その手段の1つと考えられます。
GPS打刻は、打刻した場所の位置情報を一緒に残す機能です。訪問先で打刻したことを、あとから確かめられます。ただし、位置情報の扱いには個人情報保護法の決まりがあります。職員の氏名と結び付けて記録する位置情報は、個人情報に当たります。事業所は、利用目的をできる限り特定しなければなりません。取得したときは、利用目的を本人に通知するか、公表します。特定した目的の範囲を超えて使うには、原則として本人の同意が要ります。
個人情報保護委員会は、従業者のモニタリングの留意点をQ&Aで示しています。個人データを扱う従業者の監督についての説明ですが、GPS打刻でも参考になります。留意点は、目的をあらかじめ特定し、社内規程に定めて従業者に明示することです。実施の責任者と権限を定めることも挙げられています。ルールを作り、そのとおりに行われているかを確認することも含まれます。重要な事項を定めるときは、労働組合などへの通知と、従業者への周知が望ましいとされています。
導入の前に、次の3点を販売元に確かめ、職員に説明してください。位置情報を取るのは打刻のときだけか、勤務中ずっとか。記録を見られるのは誰か。記録はいつまで残るか。
(参考:介護労働者の労働条件の確保・改善のポイント、平成30年12月28日付け基発1228第16号、個人情報の保護に関する法律第17条第1項・第18条第1項・第21条第1項、個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)、「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A)
クラウド 勤怠 管理への 切り替えの 利点と 移行の 手順
クラウド勤怠管理は、打刻のデータをインターネット経由で1か所に集める仕組みです。紙のタイムカードと比べた利点は、次の3つです。
- 複数の事業所や訪問先の打刻を、1つの画面で確かめられる。
- 深夜や時間外の時間数を、設定に沿って自動で集計できる。
- 打刻の漏れに、月末ではなく日ごとに気づける。
ただし、自動の集計は設定のとおりにしか動きません。夜勤や変形労働時間制の設定が違えば、誤った数字が毎月出ます。割増率などの決まりが変わったとき、設定を誰が直すのかも確かめます。移行は、次の順に進めます。
- 今の勤務の形を書き出します。夜勤の時間帯と休憩、変形労働時間制の起算日、宿直の許可の有無、直行直帰の有無です。勤務表の慣行だけを写し、就業規則や労使協定と照らさないのが、よくある失敗です。
- 毎月の集計で、手作業になっている部分を洗い出します。深夜の時間数や、変形労働時間制の時間外の判定などです。手作業の計算の誤りを、そのまま設定に写さないようにします。
- 打刻の方法を、職種ごとに決めます。施設の職員はICカード、訪問の職員はスマートフォンといった分け方です。事務所の中だけで試し、現場の電波の状態を確かめないのが、よくある失敗です。
- 試用の期間に、実際の勤務で打刻します。夜勤、休憩、訪問の間に空き時間のある1日を含めます。手計算の結果と、集計の結果を突き合わせます。日勤だけで試して終えないようにします。
- 1つの拠点で、賃金計算期間の1回分を紙と並行して運用します。打刻の漏れの回数と、集計の一致を確かめてから、対象を広げます。全拠点を一度に切り替えると、誤りの影響が全員の賃金に及びます。
- 過去の記録の扱いを決めます。賃金台帳や出勤簿には、保存期間があります。引き継げない分は、紙やファイルのまま期間が過ぎるまで残します。切り替えのときに、古いタイムカードを処分しないようにします。
勤怠管理の製品は、シフト・職員の製品一覧で探せます。
勤怠 管理 ソフトと 給与 計算の 連携の 確認点
勤怠管理ソフトを入れても、給与計算への転記が手作業なら負担は残ります。受け渡しの型は、大きく3つです。
連携の型 | 受け渡しの方法 | 確かめる点 |
|---|---|---|
勤怠と給与が一体のもの | 同じ仕組みの中で、集計の結果がそのまま給与計算に使われる | 自事業所の手当や締め日の決まりを設定できるか |
ファイルや自動の連携 | 勤怠の集計をCSVなどで書き出し、給与計算ソフトに取り込む。自動で送る方式もある | 今の給与計算ソフトが取り込める形式か。項目を合わせられるか |
手作業の転記 | 担当者が集計表を見て、給与計算ソフトに入力する | 転記する項目と、入力を確かめる人が決まっているか |
どの型になるかは、今使っている給与計算ソフトとの組み合わせで決まります。販売元には、次の4点を確かめます。
- 渡せる項目。労働日数、労働時間数、時間外・休日・深夜の労働時間数が、分かれて渡るか。
- 連携の方式。自動で送られるのか、その都度ファイルを書き出すのか。
- 締め日。勤怠の締め日を、賃金計算期間の締め日に合わせられるか。
- 修正の扱い。締めたあとに打刻を直したとき、給与計算の側に反映されるか。
1点目の項目は、賃金台帳に記入する事項です。4点目は、見落としやすい点です。反映されないまま支給すると、賃金に過不足が出ます。修正の締切と反映の方法を、先に決めておきます。
準備として、勤怠の集計から賃金の支給までの流れを書き出します。誰が、どのデータを、どう受け渡しているかです。手作業の転記がある箇所が、連携で減らせる箇所です。給与計算ソフトの側の確認点は「給与計算ソフトの選び方」で解説しています。
(参考:労働基準法施行規則第54条第1項)
まとめ
介護の勤怠管理は、夜勤・変形労働時間制・直行直帰の決まりを集計に反映させる作業です。出発点は、自事業所の夜勤1回を、計算例と同じ表にすることです。その表を、今の集計の結果と突き合わせます。合わない箇所が、設定や運用を直す箇所です。次に、就業規則や労使協定、宿直の許可書を確かめます。アプリやソフトを比べるのは、そのあとです。労働時間に当たるかの判断に迷う勤務は、所轄の労働基準監督署に確認してください。
参考
- 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)
- 労働基準法施行規則(昭和二十二年厚生省令第二十三号)
- 労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令(平成六年政令第五号)
- 労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)
- 労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)
- 個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)
- 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)
- 厚生労働省「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法及びじん肺法関係の解釈等について」(平成30年12月28日付け基発1228第16号)
- 厚生労働省「改正労働基準法の施行について」(昭和63年1月1日付け基発第1号、婦発第1号)
- 厚生労働省「介護労働者の労働条件の確保・改善のポイント」
- 厚生労働省リーフレット「1か月単位の変形労働時間制」
- 厚生労働省リーフレット「労働時間の考え方:「研修・教育訓練」等の取扱い」
- 岩手労働局「断続的な宿直又は日直勤務に従事する者の労働時間等に関する規定の適用除外許可申請について」
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」
- 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」

