請求管理システムは、請求の業務をまとめて管理する仕組みです。請求書の作成、発行と送付、入金の確認、未収の管理までを受け持ちます。介護事業所でこの仕組みの対象になるのは、主に利用者あての利用料の請求です。国保連への介護給付費の請求は、介護ソフトの請求機能が受け持ちます。

そのため、製品を比べる前に決めることがあります。どの請求のどの工程を、介護ソフトの外で行うかです。今の介護ソフトで足りない工程だけを補う選び方もできます。

この記事では、介護ソフトとの分担と、工程ごとに確かめる機能を整理します。Web請求書への切り替え、消費税とインボイス制度、発行後の保管も扱います。最後に、導入の手順を示します(2026年10月時点)。

請求管理システムの範囲と介護ソフトとの分担

介護サービスの費用は、保険給付の分と利用者が負担する分に分かれます。保険給付の分は、市町村が利用者に代わって事業者に支払えます。居宅サービスでは、介護保険法第41条第6項が根拠です。市町村は、その審査と支払の事務を国保連に委託できます(同条第10項)。事業所が国保連に請求するのは、この委託があるためです。

一方、利用者には、利用料のうち保険給付を除いた額を請求します。食費やおむつ代など、日常生活に要する費用も利用者に請求します。通所介護では、運営基準の第96条がこれらの費用を定めています。請求の種類ごとの請求先と仕組みは、次のとおりです。

請求の種類

請求先

主に受け持つ仕組み

介護給付費(保険給付の分)

国保連(市町村から審査と支払の委託を受けている場合)

介護ソフトの請求機能、介護請求ソフト

利用者負担と、食費・居住費・日常生活費

利用者(支払うのがご家族の場合もある)

介護ソフトの利用者請求の機能、請求管理システム

介護保険の対象にならない自費のサービス

利用者

請求管理システム

事業者どうしの取引(受託した業務の代金など)

取引先の事業者

請求管理システム、会計ソフト

表の2行目から下が、請求管理システムの対象です。介護ソフトには、利用者あての請求書を作る機能を持つものもあります。その場合は、作成より後の工程をどこで行うかを検討します。送付、入金の確認、未収の管理がこれに当たります。

国保連への請求の全体は「介護請求とは」で解説しています。そのためのソフトは「介護請求ソフトとは」で扱っています。

なお、利用料の支払を受けたときは、領収証を交付しなければなりません。根拠は介護保険法第41条第8項です。記載の決まりは「介護サービスの領収証の書き方」にまとめています。

(参考:介護保険法、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準)

請求の工程ごとに確かめる機能

請求書作成ソフト、請求書発行システム、請求書管理システムなど、似た呼び名の製品があります。これらの呼び名に、法令上の定義はありません。同じ呼び名でも、受け持つ工程は製品ごとに違います。そこで、呼び名ではなく、次の工程のどこを受け持つかで比べます。

工程

確かめること

請求データの取込

介護ソフトや表計算の金額と請求先を、転記せずに取り込めるか

請求書の作成

利用者の情報、サービスの項目と単価を登録しておけるか。前月の内容を複製して、変わった点だけを直せるか。複数のサービスの利用料を1通にまとめられるか

発行と送付

全員分をまとめて発行できるか。郵送、PDF、メール、Webでの閲覧を請求先ごとに選べるか

口座振替

振替を依頼するデータを作れるか。振替の結果を取り込めるか

入金の確認(消込)

入金の明細と請求を照合できるか。一部だけの入金や、複数月分をまとめた入金を処理できるか

未収の管理

支払期限を過ぎた請求、連絡の履歴、担当者を一覧で確かめられるか

保管と検索

発行した請求書を日付、金額、請求先で探せるか。訂正の履歴が残るか

会計との連携

売上、入金、手数料の仕訳を会計ソフトに渡せるか

自事業所で手作業が多い工程を、表から選んでください。その工程を受け持つ製品だけを、比べる対象にします。

請求書作成ソフトと請求書発行システムで比べる点

請求書作成ソフトと呼ばれる製品は、作成の工程が中心です。ここで比べるのは、毎月くり返す入力をどれだけ減らせるかです。まず、氏名、送付先、負担割合を利用者ごとに登録できるかを見ます。よく使う項目と単価を登録し、選ぶだけで反映できるかも確かめます。金額がほぼ変わらない利用者が多い事業所では、前月の複製が役立ちます。

あわせて、入力の誤りに気づける機能も確かめます。金額の桁数の確認や、前月と大きく違う金額への警告がその例です。送付する前に気づければ、利用者やご家族に誤った金額を請求せずに済みます。

請求書発行システムと呼ばれる製品は、取込から送付までを受け持ちます。介護事業所では、利用者ごとの金額が毎月変わります。そのため、様式の見た目より、転記をなくせるかを先に確かめます。介護ソフトから取り込める形式は、見本のデータを使って販売元に確認します。

口座振替と集金代行サービスとの関係

請求管理システムは、請求した金額と入金を照合する仕組みです。お金を実際に集める仕組みではありません。利用者の口座からの引き落としは、金融機関や集金代行サービスが行います。両者は、データの受け渡しでつながります。請求管理システムは、振替を依頼するデータを作ります。引き落としの後は、結果のデータを取り込んで入金を消し込みます。引き落とせなかった分は、未収として残ります。

確かめるのは、契約する集金代行サービスのデータの形式に合うかです。合わない場合は、結果を手で入力することになります。振込や現金での支払が残る利用者の入金を、同じ画面で扱えるかも見ます。集金代行サービスの種類と選び方は「集金代行サービスとは」で解説しています。

Web請求書への切り替え前の確認

Web請求書は、請求書を郵送する代わりに、Webの画面で確かめてもらう方法です。印刷、封入、投函の作業と、郵送の費用を減らせます。ただし、すべての利用者やご家族が、同じ方法に切り替えられるとは限りません。希望する方から移し、紙を希望する方には郵送を続ける形が現実的です。切り替える前に、次の4点を製品ごとに確かめます。

  • 閲覧の方法:請求書を確かめるのがご家族の場合に、ご家族用のログインの方法があるか。
  • 紙との併用:Webを希望する方と郵送を希望する方を、同じ仕組みの中で管理できるか。
  • 閲覧できる期間:過去の請求書を、いつまで閲覧やダウンロードができるか。
  • 通知の方法:新しい請求書が出たことを、メールやSMSで知らせられるか。

見落としやすいのは、紙との併用です。併用できない製品では、郵送の分を別の方法で作ることになります。

Webやメールで請求書を渡すことは、電子帳簿保存法の電子取引に当たります。渡した側の事業所も、そのデータの保存が必要になる場合があります。保存の要点は、後の節で扱います。なお、請求書をWebに替えても、領収証の交付は必要です。

利用料の消費税とインボイス制度

請求書の設定で迷いやすいのが、消費税の扱いです。介護保険のサービスの利用料は、多くが非課税です。非課税となるサービスは、消費税法の別表第二第7号イが定めています。保険給付の分だけでなく、利用者負担の分も非課税です。ただし、同じ利用者への請求でも、課税される費用があります。国税庁の通達と質疑応答事例による扱いは、次のとおりです。

請求する費用

消費税の扱い

介護保険の居宅サービス(福祉用具の貸与と販売を除く)、施設サービス、地域密着型サービスなどの利用者負担

非課税

支給限度額を超えて提供した指定居宅サービスの費用

非課税

食費、居住費・滞在費、おむつ代、理美容代など、日常生活に要する費用として介護保険法施行規則が定めるもの

非課税

利用者の選定による交通費・送迎、特別な浴槽水、特別な居室、特別な食事

課税

福祉用具の貸与と販売

身体障害者用物品に当たる場合に限り非課税

介護保険のサービスに当たらない自費のサービス、物品の販売

介護保険のサービスとしての非課税には当たらない。扱いを個別に確かめる

4行目の交通費は、通常の事業の実施地域の外に住む利用者にかかる交通費のことです。課税と非課税の費用を同じ請求書に載せる事業所は、設定に注意が必要です。明細の行ごとに税の区分を設定できるかを確かめます。区分に迷う費用は、顧問の税理士か所轄の税務署に確認します。

インボイス制度の適格請求書は、課税される取引についての書類です。交付の義務が生じるのは、課税事業者である相手から求められたときです。非課税の利用料だけを載せた請求書は、この対象になりません。関係するのは、課税される取引を事業者に請求する場合です。その場合は、登録番号、税率ごとの合計額、消費税額などを記載します。

適格請求書を交付できるのは、税務署長の登録を受けた事業者だけです。自法人が登録を受けているかを、先に確かめてください。製品の「インボイス対応」という表示だけでは、判断できません。自事業所に必要な記載ができるかを、見本の請求書で確かめます。

(参考:消費税法、消費税法基本通達 6-7-1〜6-7-3、国税庁 質疑応答事例「要介護者が負担する介護サービス費用の取扱い」「非課税となる「居宅介護サービス費の支給に係る居宅サービス」の具体的な範囲」、国税庁 タックスアンサー No.6498、No.6625)

請求書管理システムで確かめる保管と検索

請求書管理システムと呼ばれる製品は、発行した後の保管と検索に重点を置いています。過去の請求書は、利用者やご家族から問い合わせを受けたときなどに必要になります。

Webやメールで授受した請求書のデータには、電子帳簿保存法の決まりがあります。所得税や法人税の保存義務がある事業者は、データのまま保存しなければなりません。根拠は同法の第7条です。受け取ったデータだけでなく、交付したデータも対象です。国税庁の一問一答は、保存の要件を挙げています。改ざんを防ぐ措置、画面などで確かめられる装置の備付け、検索機能の確保などです。保存する期間は、紙の書類と同じです。法人は、確定申告書の提出期限の翌日から7年間です。欠損金が生じた事業年度などは、10年間になります。

なお、社会福祉法人などの公益法人等は、保存の範囲が異なる場合があります。青色申告法人でない公益法人等は、収益事業に関するデータの保存で足りるとされています。自法人の扱いは、顧問の税理士か所轄の税務署に確かめてください。

製品を比べるときは、次の5点を販売元に確かめます。

  • 検索:日付、金額、請求先で、過去の請求書を探せるか。
  • 保存の期間:必要な年数のあいだ、データを保持できるか。
  • 訂正の履歴:発行した後に直したとき、いつ何を変えたかが残るか。
  • 出力:画面の表示に加えて、書面やPDFで出力できるか。
  • 解約した後:過去の分をまとめて書き出せるか。解約後も閲覧できる期間があるか。

3点目は、後から説明するために欠かせません。直すたびに元のデータが上書きされると、変更の経緯を示せなくなります。5点目は、保存の期間が残っているうちに解約する場合に関わります。国税庁は、システムを替えるときの扱いも示しています。データを移すあいだも、改ざんを防ぐ措置が必要とされています。

保存の要件の詳しい内容と、紙の請求書を電子化する手順は、別の記事で扱っています。「紙の請求書を電子化する移行手順」を参照してください。

(参考:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律、国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」、国税庁 タックスアンサー No.5930)

導入の手順

  1. 請求を種類ごとに書き出します。国保連、利用者、自費、事業者どうしの取引に分け、件数を数えます。金額のもとになるデータが、どのソフトや表にあるかも書きます。国保連への請求まで置き換える前提で製品を探すのが、よくある誤りです。
  2. 送付と回収の方法ごとに、件数を数えます。送付は郵送、手渡し、メールなどです。回収は口座振替、振込、現金などです。宛名と送付先が違う利用者を数え落とすと、試用のときに手戻りが出ます。
  3. 手作業が多い工程を選び、必要な機能を決めます。入金の確認、未収の連絡、会計の入力について、担当者と締め日も書きます。機能の多さや様式の見た目で選ぶと、使わない機能に費用を払うことになります。
  4. 試用では、実際の利用者数に近い件数で、発行にかかる時間を測ります。表計算のデータを取り込めるかと、利用者の登録にかかる手間も見ます。金額が変わった利用者の修正も試します。前月の複製で、2か月目の入力がどれだけ減るかも確かめます。数件の見本だけで判断すると、まとめて発行するときの手間が分かりません。
  5. 1回分の締めを、今の方法と並行して行います。請求の件数、合計額、税の区分、口座振替の額が一致するかを確かめます。会計ソフトに渡した後の残高も照合します。作成にかかる時間だけを比べて、差額の確認を省かないようにします。
  6. Web請求書は、希望する利用者やご家族から始めます。実際にログインして確かめてもらい、分かりにくい点を聞きます。通知のメールが迷惑メールに振り分けられていないかも確かめます。全員を一度に切り替えると、請求に気づかない方が出るおそれがあります。

問題がなければ、対象の請求と利用者を段階的に広げます。試用には、実在の個人情報を必要以上に入れないようにします。

見積もりは、費用の型ごとに分けて比べます。初期費用、月額、請求件数に応じた従量の料金、郵送の代行、口座振替の手数料などです。利用者の個人情報を扱うため、権限の設定と操作の履歴も確かめます。バックアップと、障害のときの復旧の方法も聞いておきます。

まとめ

請求管理システムは、利用料の請求書の作成から入金の確認、未収の管理までを受け持ちます。国保連への請求は、介護ソフトの役割です。出発点は、自事業所の請求を種類ごとに書き出すことです。そのうえで、手作業が多い工程を受け持つ製品に絞って試用します。課税される費用がある事業所は、税の区分の設定も確かめてください。税の区分や保存の範囲に迷うときは、顧問の税理士か所轄の税務署に確認します。

参考